2014年3月7日金曜日

❏藤原直哉の「規制緩和より産業再生」

藤原 直哉
NHKラジオ第1放送ビジネス展望3月7日放送分
規制緩和より産業再生
Q:アベノミクスで景気が良くなってきたと言われますがいかがでしょうか?
・2年前に比べて仕事が増えた企業や人は多いと思う。
・しかしこの先もっと増えると楽観的に考えているところは少ない。所詮は日銀の激しい金融緩和と口先介入による円安誘導で仕事が増えたことと公共事業頼りだ。
・4月の消費増税はかなり厳しいと思う。まず消費者物価は既に年間で1.4%も上がっている。しかし賃金や年金が上がっている人はあまりいない。
・だから賃金や年金の上がらない個人は消費増税分は貯蓄を取り崩して払うか、生活を切り詰めるしかない。
・また企業であれば4月以降は売り上げの3%分の現金を新たに払わなければならない。もしその新たな3%分の現金がなければ銀行から借りるしかない。さらにもし銀行が貸してくれなければその会社は消費税が払えなくて倒産する。
・企業が消費税倒産になる最大のリスクは、利益や現金が伴わないのに売上だけ立ててしまうことだ。消費税倒産から企業を守るには、利益や現金の伴わない売り上げは立てないことだ。そうすれば売り上げは減るけれども支払う消費税も少なくて済み、消費税倒産は免れる。
・建設業でも流通業でも製造業でも最近は利益が出ない、あるいはキャッシュフローが遅れるのに売上だけとにかく立てることが少なくない。消費増税後はそういうことはできなくなる。あるいは利益や現金が出ない会社は倒産する前に売却するか廃業するしかない。
・世界を見ても中国を含めて新興国経済は嵐の中にあるし、欧米も破裂寸前の住宅バブルを抱えて大変緊張感が高い状態にある。こうしてみてくると4月以降は個人にとっても企業にとっても相当厳しいことになると思う。
Q:どうすればよいのでしょうか
・今の日本は多くの産業で世界のなかでの競争優位が失われ、不毛の価格競争に追い込まれ、製品やサービスの品質に疑問が出始めているところが少なくない。
・同時に今の日本は巨額の財政赤字に加えて貿易赤字も巨額であり、これは決して輸入燃料が多いからではない。今まで多額の黒字を稼いでいた輸出競争力が失われると同時に、あらゆる面で日本が輸入依存体質になってしまったからだ。今や日本は財政と貿易の双子の赤字大国になっている。その危機感を国民はまず共有しなければならない。
・そして最近の人手不足は景気が良くなってきたからというよりも、いよいよ少子高齢化で労働力不足が本格的になってきたということも示している。さらに働く人たちの心の問題は今や極めて深刻であり、人はいてもやる気と能力のある労働力がないという大変危機的な状況に陥っている。
・こうした問題を克服するには日本は改めてこれからの日本と世界をリードできる産業を今一度再生して、新たな雇用を増やし、国内で内需中心の経済を立て直して輸入依存体質から国内で物を作れる体制に戻し、同時に安く大量に輸出するのではなくて、もっと付加価値の高い製品を輸出できるように製品の高度化を行わなければならない。
・振り返ってみるとこの20年ほどの日本は規制緩和と市場原理を行えば経済が良くなるという考え方で官も民も運営されてきた。
・だから政府の成長戦略はこの20年ぐらい政権が変わってもみんな判で押したように規制緩和と市場原理だし、民のほうはたいていどこでもコスト削減と海外生産移転である。
・しかしそれを20年続けて日本経済はよみがえっただろうか?答えはノーで、日本経済は一段と衰退した。誤った薬を飲んだということだ。
・それを裏付けるようにそういう経済政策をいくら進めても財政赤字は増えるばかり。特に市場原理が好きな外国人株主が経営を動かした日本の金融機関や製造業はガタガタに壊されてしまった。
・その結果として日本は財政と貿易の双子の赤字に陥り、未だに国として軌道修正ができていない。それで焦って消費増税などしようとするから冒頭言ったような危険な状況がこれから訪れるのではないか。
Q:今までのやり方がまちがっていたのしょうか
・何事もやり過ぎたらいけない。昭和の硬直化した政治経済を壊すために規制緩和と市場原理の導入は確かに効果があった。しかしこれをやり過ぎて日本は官民ともに激しい衰退に陥り、財政と貿易の双子の赤字という極めて危険な状況まで追い込まれた。
・もうこれ以上日本政府は規制緩和と市場原理導入を政策の柱にすべきではない。また企業は確たる見込みもないなにコスト削減と海外生産移転で成長できると思うべきではない。
・我々は官民の壁を越えて産業再生から日本再生につなげなければならない。国内外に分散してしまった人材やノウハウを今一度結集してこれからの時代に競争力のある製品やサービスをどんどん生み出していかなければならない。
・80年代の米国も財政と貿易の双子の赤字を建て直すことが出来なくて、結局産業は再生せず、現在に至る。日本も今や全く同じ分水嶺に立っている。ここで産業を再生しないと日本の産業は亡くなってしまう。非常に危機的な状況にある。
・それを支えるためのチーム作りこそ、今の政治が最初にやらなければならないことだ。それが日本の経済政策だ。

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